アルバム“pianona”座談会 vol.1 <Kyrie>


6月15日に発売された、中島ノブユキさんプロデュースのフクモリ発のアルバム“pianona”。6月某日、このアルバムの制作(レコーディング〜ミックス〜マスタリング)に関わったスタッフみなさんをお呼びたてし、制作裏話を座談会で語っていただきました。各曲がいつ、どんなふうに生み出されたのか?を知ると、より深く、また違う側面からこのアルバムを楽しめると思います。是非ご一読ください。


 


参加者:


中島ノブユキ(プロデューサー、編曲、演奏)


奥田泰次(レコーディングエンジニア)


狩野真(調律師)


清宮陵一(コーディネーター)


吉澤藤佳(フクモリ)


 


〜はじめに〜


吉澤(以下吉): レコーディングしたのは…2月20,21日でしたから、もう数ヶ月前になりますね。


清宮(以下清):そうですね。(レコーディング当日の香盤表出す)


中島(以下中):清宮さん渾身の、この縫い合わせるようなスケジュール(笑)


清:奇跡的に二日間に落とし込めました。


中:でも比較的スムーズに進んだレコーディングでしたね。やっぱり一度ライブでやっていたし、奥田くんがライブを観に来てくれたことが何度かあったというのも良かった。


清:でも遡れば…最初、本当は全部フクモリで録ろうって話だったんですよね。定休日の店内を使って。


中:そうそう!それが最初のアイディアだった。


奥田(以下奥):僕はちょっと青ざめましたけどね(笑)


吉:私はそーゆう大変さは全然わからなかったので…フクモリで録る、ああそうですよね、と思いましたけど、とんでもないことだったっていう。


中:1~2曲だったら味として良い感じがしたけど。


奥:お店って部屋なんだけど、やっぱり色んなノイズがあるんですよ。冷蔵庫なんかは意外と音が出てるので…。


清:冷蔵庫は数時間だったらとめられるからその間に録る!とか言ってましたよね。


吉:今思うととんでもないことでしたね(笑)レコーディングを体験してわかりました。


奥:部屋で楽器を鳴らすという発想はすごく良いと思うんですけどね、響きとか。でも他のものもかなり響いてしまっていた(笑)。


吉:最終的にはフクモリでの演奏、1曲になってよかったですね。


狩:で、レコーディング前にピアノを修理しておこうといって年末~正月にピアノを修理しましたね。


吉:ピアノの中身を全部狩野さんに持っていって頂いて。その直後に持田さんとのpianona(2011年1月24日)があって、そのひと月後の2月20,21日にレコーディングでしたね。


 


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〜レコーディング1日目〜



<Kyrie〜カントゥス〜> 2011年2月20日AM


 


中島さん&カントゥスのみなさん


 


中:そっか、カントゥスから始まったんだったね。で、スピネットだけこの日の最後に録ったんだった。カントゥスは全員来てくれましたね。


奥:カントゥスのやわらかい雰囲気からスタートできたのはよかったと思いますね。いきなりピアノソロとか、北村さんの“oblivion”からだったらやっぱり空気変わってたと思いますよ。


吉:そーかー、そういうものなんですね。


中:やわらかく賑やかで、それでいて厳粛な雰囲気もあったから、それはレコーディング全体に影響を与えているかもね。レコーディングはそーゆうところが面白い。録る順番は意図的じゃなくて、こうせざるをえなくて決まったんだけど、後になるとそのプロセスそのものが作品に影響を与えていたりもする。奥田君が言うように、もし権藤さんとのセッションとかを最初にやっていたら、また全く違った空気感のあるアルバムになっていたかもしれない。


奥:そうですね。


吉:録る時、カントゥスのみなさんの立ち位置を変えたりしてましたが、あれは音の広がり方とかを考えてたんですか?


奥:あの曲は音場的にいうと目指していたところは“教会”だったんですよね。


中:最初横に広がって録ってたけど、逆に二列にして狭めようと言って音を引き締めてたよね。あれはすごい良かった。


 



 


吉:スピネッタは録り終えてから、入れるか入れないか悩んでましたよね。


中:でも結局入れてよかった(笑)。あれはまた特殊な調律なんですよね?


狩:ベルクマイスターの三番といって、Fの調では一番綺麗に響く調律。黒鍵が二つ以上入ると濁っちゃうんだけど。


中:あれ?でも確か黒鍵3つは入っていたと思う…フィスモール(嬰ヘ短調)だし。


 


マイクのセッティングをする奥田さんとスピネッタを調律する狩野さん


 


狩:フィスモールは全然大丈夫。あれは“Kyrie”だから、曲の最初と最後の部分はできるだけ純正な和声に近づけて転調してくと緊張感が出るようにする。ソナタや宗教音楽もみんなそうなんだけど、調性感の移り変わりが大切で、曲が終わった時に一番美しく響くように和声をチョイスする。いや、使い方しだいなんだけど。(笑)、赦しとか安らぎとか平和とかを感じる三度は、十二平均律にはどこにもない。だからそれを、始まりとか終わりとか、どこかほっとするところを作ってあげるんです。で、転調していくと迷いとか怒りとかそういったものが出て来て、曲の終わりには、安らかな和声で終わる。曲が解決した感じになります。そういう風に調律しました。


中:あれは次々と転調していく曲だから、その度にカラーがかわっていきますよね。あれが十二平均律だと、転調してもただ調が変わったという印象しかないんですね。


狩:そうですね、やはりその中での色とか空気みたいなものは変わらないですね。


吉:はぁ…(何を話しているか全くワカラナイですがとりあえずスゴいな…と)。


中:贅沢なアルバムだなぁ〜。調性の変化による響きの違いまで(笑)。


 


その他のお話はこちら↓から!


vol.1・・Kylie 〜カントゥス篇〜

vol.2・・Thinking of You 〜石井マサユキさん、森俊二さん篇〜

vol.3・・Oblivion〜北村聡さん篇〜

vol.4・・エンジニア・調律篇

vol.5・・What a Wonderful World〜武田カオリさん、高田漣さん、鈴木正人さん、塩谷博之さん篇〜

vol.6・・Simon`s Dream 〜権藤知彦さん、田中佑司さん篇〜

vol.7・・East St.Louis Toodle-Oo 〜田村玄一さん篇〜

vol.8・・Pocket 〜持田香織さん篇〜

vol.9・・fragments Ⅰ-Ⅴ 〜中島ノブユキさん篇〜

vol.10・・曲順、ミックス、マスタリング篇〜

 


“pianona”絶賛発売中デス!


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