参加者:
中島ノブユキ(プロデューサー、編曲、演奏)
奥田泰次(レコーディングエンジニア)
狩野真(調律師)
清宮陵一(コーディネーター)
吉澤藤佳(フクモリ)
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〜レコーディング二日目〜
<What a wonderful world 〜武田カオリさん、高田漣さん、鈴木正人さん、塩谷博之さん〜> 2011年2月21日AM
中島(以下中):二日目も午前中からレコーディングが始まってるんだけど、普段はなかなか無いよね。
奥田(以下奥):そうですね、大体13時頃音出しして14時から録音みたいなことが多いですよね。
吉澤(以下吉):じゃ今回はスタートが早かったんですね?!
中:メニューが豊富でしたからね。
奥:だから完成してみると「あれ?これ二日間だったっけ?」って思いますよ。で、この二日目の一発目がこの布陣(アーティストリストを指しながら)…手練れな方々ばかりで(笑)。この曲はすごい早く終わりましたもんね。ベーシックは多分3テイクくらいしか録ってないんじゃないかな?歌も完璧だったし。
中:ね〜。
清宮(以下清):よかったですよね。
狩野(以下狩):めちゃくちゃよかったですよね。
奥:普通に考えると「これ今日も濃いな〜」って思うんだけど、最初がスッと行ったんで、この日もまた良いスタートが切れましたよね。
中:うん、いいスタートが切れましたね。この曲は確か僕が鈴木(正人)くんにスペインのギタロンというギターのお化けみたいな楽器を持ってきて、とお願いしていて、最初そのセッティングをずっとしてくれてて…試したら全然曲に合わなくてダメだったという…(笑)。で、「鈴木くんごめんやっぱり普通のアコースティックベースで」って言ったら、もう伝家の宝刀ぬいた感じがあったね。
奥:この曲は(吉澤)藤佳さんが涙ぐんでいたって印象がありますね。あのコンソールの前のソファのとこにずっと居て。
中:あ、ほんと?
吉:私、号泣でしたよ!ていうかあれ午前中だったんですね…。
中:まず午前中にひと泣き(笑)。素晴らしいですね。
吉:興奮してたのもありますけど、本当にただただ全ての音が美しくて感動…気付いたら、勝手に涙が止まらない。今ここで生まれたこんなに美しい世界(音色)…っていう現実に心揺さぶられてしまったんです。
中:武田さんもよく午前中から歌ってくれたよね。喉のこと考えるともうちょっと遅いほうがよかったと思うんだけど…ここしか時間空いてなかったんだけど。
奥:曲的にはその日の一番最後にしようとなりがちですけどね。
中:あの武田さんの第一声もしびれましたね。これも最初の予定では歌は録り直して…とか考えていたけれど、結局せーので録ったものがよくてそのままだもんね。
吉:カオリさんとのレコーディングはどうでしたか?
中:変なエゴが無い人だと思った。私が歌で引っ張るわ、みたいなのもないし、かといって凄く控えめにするでもなく。僕はすごく不思議な印象があるんだけど、武田さんの歌の雰囲気は、他の楽器を単なる伴奏みたいに聴こえなくさせるというか…それぞれの楽器奏者がソリスト的な音色感として聴こえて、その全員が音に向かっているようなムードで録れたなと思いました。
清:僕は実は初めて武田さんの歌を聴いたんですけど、本当にびっくりしましたね。泣くという表現方法ではないんですが、あの音楽の中に居る彼女の位置が、中島さんがおっしゃったように前に出るでもなく引くでもなく、でも堂々としてるんだけど主張するでもなく…。なんか人間性もそんな感じでしたよね。コントロールルームではちょこんと座ってて、でも歌い始めたらもの凄かった。でも、終わったらスッと帰ってしまうというところも含めて。
吉:わーいわーい早く終わった〜とかって喜んでましたね(笑)ほんとに無邪気な。
中:で、塩谷さんのクラリネットの音色もよかったですねー。あの吹ききらない感じが(笑)。
吉:ふききらない感じ?
中:吹ききらないですもん塩谷さん。何だろう、まるで葉巻でもふかしてるかのような(笑)。いいですよねー。
奥:曲の冒頭の音色も素晴らしいですもんね。
吉:そうだ、それで最後に漣さんの冒頭のスティールギターを録音したのが、すごく印象的でした。で、その音を中島さんは「もうちょっとこんな感じ」という風に漣さんに伝えていたので、ああ、もう中島さんのアタマの中ではこの曲が出来上がってるんだなぁーと思いました。
中:この曲は何となくアルバムの中で最後になるな、っていうのは予感していたから、ピアノから始まるんじゃなくて他の楽器にしたいなぁとは思いましたね。
吉:それがクラリネットのメロディじゃなくて漣さんのあのスティールギター。それはあの場で決めたんですか?
中:うん、あの場で決めましたね。もちろん曲の中でスティールギターの音は欲しかったけど、入口としてスティールギターで始まるっていうのは良いなーと思って。で、この時の録り方が面白いなと思ったんだけど、この時かなりアンプからマイク離して録ってたでしょ?
奥:うん、そうですね。イントロだからあまり濃すぎない音のほうが良いかなと思ったのと、フクモリの室内感というか、そういうイメージができたら良いのかなと思ってましたね。
中:僕よくわからないけど、普通だったらもう少しアンプにマイクを近づけて録って、エフェクターで遠ざけたりするよね。でも奥田君は最初からマイクを離して録ってるのが印象的だった。あーゆうのって割と覚悟がいるんじゃないかなぁ?近くで録った音をあとから機械的に遠ざけることはできるけど、遠ざけて録ったら後から近づけるような調製は難しいから、最初からそういう音で録ろうって決め込んでたんだろうね。
奥:そうすることによって次に出てくる一音がバッとくるんです。
吉:なるほどー、そんな演出がされてたんですね。
中:されてたんですねー、さり気なく(笑)。
吉:この曲は最初もう少しテンポが早かったですけど、中島さんがもう少し遅くしてみようって言って遅くしましたよね。私はその判断も、さすが!と思いました。
奥:ほんとに微妙に少し遅くしたんだけど、そこにちょっとした隙間を作ったんですね。その隙間によって、やっぱりベースとかの余韻感とかが違ってくるから。音数が少ない分、そーゆう微妙な判断がその曲に与える影響も大きくなりますからね。
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