参加者:
中島ノブユキ(プロデューサー、編曲、演奏)
奥田泰次(レコーディングエンジニア)
狩野真(調律師)
清宮陵一(コーディネーター)
吉澤藤佳(フクモリ)
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<エンジニアや調律のことなど>
吉澤(以下吉):レコーディングする時にはやっぱり最初にこういう風にしよう!と描いて取組むわけですか?
中島(以下中):それはそう。じゃないと悩みに入ってしまうからね。もちろんレコーディング中の空気で変わることもあるんだけど、最初にイメージを明確にしておけば、変わっていける余裕、振れ幅が生まれる気がする。
吉:それは奥田さんも共有してるわけですね。
奥田(以下奥):僕は前作のメランコリアの時は音響的なところを狙ってくとか色々考えていて…、でも今回は割と素直な楽な気持ちで、どちらかというと記録しようという感じで取組みました。それは今回の音にも出ていると思いますね。中島さんのソロの作品ではなく、共演者との空気感を出すというか。音を作ろうというよりは“録る”という気持ちがフラットで割と気楽ではありましたね。メランコリアの時は曲順とかすごく考えてたりしたんですが、今回はどうなっても大丈夫かなって思ってました。
中:レコーディング中の安心感ていうのは大事ですね。例えば調律師の狩野さんがずっと居てくれるという安心感も。
清宮(以下清):曲もこれだけバラエティに富んでますからね。
狩:各曲をこーゆうイメージで弾きたいなぁというのが伝わってくるから、そうすると5分だけでもいいからその曲に合わせた調律をしたいと思います。それをさせてもらえると各曲を大切に思いながら調律が出来るので、それだけ達成感や満足感もあるので嬉しい。
吉:ピアノの音色って午前・午後、時間によって違ってくるっておっしゃってたのにはびっくりしました。
狩:午前、午後、夜、夜中…違いますね。それは「調律をして何分経った」とかそーゆうことや、このピアノだからとかの理由ではなくて、“その時間帯の音”というのがあるんです。
中:もちろんホンキートンクやプリペアードみたいに劇的に変わってる曲(音色)もあるんだけど、実は一聴すると同じピアノの音に聴こえる曲なんかも、各曲の録音の間にやってくれている狩野さんの微調整によって、なんとなくその曲になめらかさが生まれたり、きらめきが加わっていたり、微妙な変化が存在してくるんです。このアルバムは音数も多くはないしシンプルな音のアルバムに聴こえがちだけど、“時間帯による音色の変化”とかその辺も記録されているし、実は割と贅沢だったりする。
狩野(以下狩):あまり音色が狂ってしまうと、もう時間帯による音の変化どころじゃなくなってしまう。でも今回は時間帯による音の変化を気にかける余裕があったので、それは良かったですね。調律って、ピアニストから「こうして欲しい」と言われる前に行動を起こせば、更に上の段階、つまり各曲に合わせた調律、というのが出来る。だから常に、ピアニストに必要だと思われる前の段階で調律に入るように心がけてます。
中:狩野さんが凄いなと思うのは、いくら時間が無くても全く気にしないで「ちょっと時間ちょうだい」って言って調律しちゃうとこ(笑)。でもそうしてふと生まれる10分間とかでこちらも気持ちが切り替わって余裕が生まれるんですよね。ある意味レコーディングのプロセスにおけるムードとかも作ってもらってるなぁと思いますね。
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